家づくりのご相談を受けていると、「とにかく収納を多くしたい」という声をよく耳にします。
確かに、収納は暮らしやすさを左右する大切な要素です。しかし、収納量が多ければ多いほど快適になるか? と聞かれると、実は答えは「NO」です。
今回は、「収納が多い家」と「快適に暮らせる家」の違い、そして本当に必要な収納のつくり方についてお話しします。
1.“収納を増やす”ことが目的化していませんか?
家づくりの打ち合わせをしていると、「とりあえず収納を増やしておけば安心」という考えになりがちです。
しかし、やみくもに収納を増やすと、次のような問題が起こります。
- ・収納が多い分、居室が狭くなる
- ・動線から離れた“使いにくい収納”が増える
- ・収納スペースが“物置”になり、管理が行き届かない
- ・いつの間にか不要な物が溜まりやすくなる
どれだけ大きな収納があっても、使いにくければ宝の持ち腐れです。
収納は「量」より「質」が大切なのです。
2.快適な暮らしをつくる収納に必要なのは“場所と動線”
実際に暮らしやすい家は、収納の場所と動線がとてもシンプルです。
◆“よく使うもの”は“よく使う場所”に置く
たとえば…
- ・子どものランドセル → リビング近くの収納
- ・日用品のストック → キッチンや洗面近く
- ・コートやバッグ → 玄関脇のクローゼット
このように、使う頻度が高いものは、使う場所から最短距離に収納があると、とても快適です。
◆動線の途中に収納をつくる
「帰宅 → 脱ぐ → 片づける」という流れを考えると、玄関にクロークやコート掛けをつくるだけで、家の中が散らかりにくくなります。
逆に、動線から外れた場所に収納があると、物はそこで使われず、別の場所に“仮置き”されやすくなります。
3.収納は“量”より“深さ・幅・高さ”のほうが重要
収納を多くつくるよりも、同じ収納量でも使いやすさが大きく変わるポイントがあります。
【深さ】深すぎる収納は“使わない物”を生む
押入れ並みに奥行きのある収納は、奥の物が取り出しづらく、結局デッドスペースになりがちです。
→奥行き45cm程度のほうが、日用品や衣類をムダなく使えます。
【幅】棚の幅は、日用品や家電のサイズから逆算
大きい棚は一見便利ですが、つい詰め込みすぎて管理が難しくなることも。
→用途を想定して棚幅を調整すると、散らかりにくい収納になります。
【高さ】子どもが届かない場所は“使わないスペース”に
高すぎる収納は、踏み台が必要になり、日常的には使われません。
→家族全員が使える高さに調整することが大切です。
4.収納は“家族の暮らし方”によって最適解が変わる
実は、家の収納に“正解”はありません。
家族構成や生活スタイルによって、必要な量も場所も変わるからです。
◆共働き家庭の場合
- ・帰宅後、すぐに片づけられる玄関収納
- ・時短を意識したキッチンのストック収納
→動線上に「置きたいもの専用の場所」を作るのが鍵です。
◆子育て家庭の場合
- ・ランドセル・幼稚園グッズの指定席
- ・成長に合わせて変えられる収納棚
→リビング周辺に“子ども専用ゾーン”をつくると片づけが習慣化します。
◆趣味が多い家庭の場合
- ・アウトドア用品
- ・DIY・釣り・スポーツ用品
→土間収納や屋外とつながるスペースがあると便利です。
家族がどんな暮らしをしたいのかを整理すると、必要なのは“量”ではなく、“家族の暮らしに合った収納” だと分かります。
本当に快適な家は、収納の“量”では決まらない
収納を増やすことは悪いことではありません。
しかし、収納が多い=使いやすい家とは限らないのです。
大切なのは――
- ・暮らしの動線に合った場所に収納があること
- ・家族ごとの生活スタイルに合っていること
- ・必要なモノだけを無理なく片づけられること
この3つがそろってはじめて、収納は“快適な暮らしを支える仕組み”になります。
もし「どのくらい収納をつくればいいか分からない」「動線に合う収納が分からない」と悩まれている場合は、お気軽にご相談ください。
実際の生活イメージをお聞きしながら、ご家族にぴったりの収納計画をご提案いたします。